エビイモで菜園風芋棒。。。

芋棒

エビイモで菜園風芋棒。。。

 エビイモとは里芋「唐芋(からいも)」という品種を、人の手間ひまかけて海老のように長くなるように栽培した里芋の子芋のこと。親芋と孫芋は海老のような形にはなりませんが。。。海老はその姿が、腰の曲がった老人に似ているため、腰が曲がるほどの長生きにあやかって、長寿の縁起物とされています。エビイモの名の由来は形状や縞模様が海老の姿に似ているからとありますが、もちろん海老が縁起物であるが故も要因の一つでしょう。里芋自体も、子芋、孫芋と増える様子から、子孫繁栄の縁起物とされていますから、それに海老の名がつけばもっと縁起がよろしいのでしょう、高級食材として秋冬に流通します。もちろん、人の手によって株元への土寄せが栽培期間中の夏の暑い盛りに4〜5回必要とされますので、人件費が嵩んで高価になるのは当然のことです。残念ですが、この重労働を要する海老芋は、農家の高齢化に伴って、国内の生産量は年々減少しているそうです。

 今回は、エビイモ料理では知る人ぞ知る京都伝統料理「芋棒」からヒントを得て、菜園風芋棒を作ってみました。芋棒はエビイモと棒鱈の煮物で、江戸時代に京都で生まれたものです。棒鱈とは、カチカチに乾燥させた干し鱈のこと。15世紀の大航海時代に船上の保存食として重宝され、また世界各地に広められました。現在のイタリアでもストッカフィッソやバッカラと称されポピュラーな食材となっています。

 江戸時代中期、京都の青蓮院に仕えていた平野権太夫は、宮様に唐芋の栽培を頼まれ、海老芋を完成。当時の献上品だった棒鱈との煮物を考案したそうで、これが芋棒の始まりとされています。棒鱈も縁起物の一つで、神様にお供えする乾物、神様の食べ物とされています。

 菜園風とは、なるべく菜園で穫れたままに近い姿でという思いを込めています。できれば見た目だけでも土が薫るように仕上げたいものです。そういった意味で、ここではエビイモを皮付きのまま長時間低温ローストしたものに、皮むきしたエビイモと北海道から取り寄せた棒鱈を一緒に炊いたものを1つの皿に寄せました。つくばで育てたエビイモと北海道からやってきた棒鱈の出会いもん料理です。ソースになっているものは、エビイモと煮汁をすり混ぜたものです。トッピングには庭先で穫れたレモンの皮を。エビイモは里芋の中でもエグ味が少ないので、皮ごと調理しても美味しくいただけます。皮を厚く剥いて綺麗に調理されたものは口当たりがまろやかでとても美味しいですが、この皮付き菜園風は、この芋ならではの野趣あふれる醍醐味が堪能できる逸品です。

 

里芋「エビイモ」

里芋「エビイモ」

 エビイモは京都の伝統野菜で、里芋の1種。写真は根と孫芋と茎付きです。流通では、中々この姿は見れないでしょうから、菜園から穫れたそのままを掲載しました。

 里芋は日本でも古くから食されている植物性食材です。はるか昔、インダス、ガンジス、長江下流域あたりから日本に移住した縄文人が持ち込んだそうです。この様子から、里芋が長期保存に最適な食材であることが伺えます。日本にはそれ以前にも里芋が伝来していたそうですが、それは多年生の里芋で、現存する1年生の里芋とは違ったようです。その後、弥生時代になると、温暖な気候に適していた里芋を北陸や東北でも作れないかとチャレンジする者達が現れます。これが、里芋の選抜育種つまり品種改良の始まりだぞうです。この後、長い年月をかけて、各地域固有の栽培方法や伝統食の進化の影響を受けて、たくさんの品種が生まれてきたそうです。現在も、石川早生、土垂、セレベス、唐芋、八つ頭、善光寺芋、大野芋、紀州芋、蓮葉芋、豊後芋など数えれば、両手両足の指では足りません。エビイモもその一つです。江戸時代中期、京都の青蓮院の宮様が九州から持ち帰った里芋を青蓮院に仕えていた平野権太夫に栽培を命じます。手間ひまかけて丹精込めてできあがったそれを見て、宮様が縁起物のエビに似ていることから「エビイモ」と名付けたそうです。その後、平野権太夫は宮中の献上物の棒鱈と共に炊いて「芋棒」という料理を作りました。これが約300年もの間、京都の伝統食として、今も京都で食べられています。この「芋棒」を生み出した平野権太夫の家系が今でも京都で「いもぼう平野家本家」という店を構え、洗練された「芋棒」を供しているそうです。

 エビイモは京都伝統野菜の一つであることから、京都で栽培されているように感じますが、実は静岡県が日本全体の8割ほどを生産しているそうです。しかし、エビイモ栽培は夏の暑い盛りに重労働が必要なため、高齢化した農家が減産したり、または栽培を断念し、生産量は年々減少しています。その結果、関西では年末年始に不可欠な食材なため、価格高騰が予測されます。数十年後には超高級食材になるかもしれません。今でも、東京のデパートでは大きい物で、1本1,000円ほどしますので、2,000〜3,000円となるのも、そう遠い話ではないかもしれません。今の若い農家さん達に、是非取り組んでいただきたい農産物ですね。

 

天高く マヤ放つ 愛
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イタリアントマト「コストルト・フィオレンティーノ」
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