酒蒸し蛤で、うぐいす四葉キュウリの冷汁うどん。。。
20年ほど前、埼玉県鴻巣市の農家さんを訪問した時に、美味しい郷土料理をいただきました。それは冷汁うどん。冷たい味噌汁にキュウリをすりおろして、手打ちのうどんをつけていただく農家さん特製の「武蔵野うどん」でした。「武蔵野うどん」は、2022年に文化庁「伝統の100年フード」に認定された江戸時代から続く郷土料理です。東京都と埼玉県にまたがる武蔵野台地は江戸の頃、水はけが早い土壌で、稲作は難しかったそうです。そこで、用水路をひき、少ない水分でも栽培できる小麦栽培が広まったそうです。地元農民によって手打ちうどん文化が生まれ、何代も伝承されて「武蔵野うどん」は育まれました。やがて昭和の後半に「武蔵野うどん」の名が付けられたそうです。今でも地元で採れる「地粉」を使った「武蔵野手打ちうどん」が食べられるお店がたくさんあります。いろいろなお店で共通してあるメニューがキノコ汁うどん。温かいキノコ汁に冷たいうどんをつけて食べるものです。何軒かのお店に通いましたが、冷汁うどんにはお目にかかったことはありません。それならばと、蛤の酒蒸しと合わせた冷たい味噌汁に、茨城県つくば市の我が家の畑で採れた「うぐいす四葉(スーヨー)キュウリ」のおろしと薄切りを加えて、茨城県産地粉手延べうどんをいただきました。美しい翡翠色と上品な香りで、暑さで失った食欲を目覚めさせる、爽やかな逸品です。。。
うぐいす四葉(スーヨー)キュウリ
キュウリはウリ科のつる性1年草。果実を若いうちに採取して食用とします。原産地はインド北部とされ、日本には6世紀頃に中国から伝来されたそうです。最初は果実の完熟したものを食用としていましたが、これが不味くて不評だったそうです。江戸時代の後期になると、今のように若採りのものを食べるようになります。他のウリ類より早く出回るので、初物好きの江戸の庶民に人気が広まったそうです。最近のキュウリは表皮にいぼいぼやブルーム(白い粉のようなもの)のないツルツルピカピカなものが主流ですが、江戸時代から昭和の頃までは、いぼいぼが主流でした。うぐいす四葉キュウリはそのいぼいぼ系の一つで、昭和30年代生まれのわたしたちに懐かしい味覚を思い出させてくれます。寿司ネタの一つ、キュウリのことをカッパと呼びますが、それは日本の妖怪「カッパ」の大好物であることが所以だそうです。余談ですが、実はこの「カッパ」、イタリア人もよく知っているのです。とは言っても、妖怪ではなくて、イタリア語のアルファベートの「K」をカッパと発音します。カッパの頭文字は「K」と覚えておけばイタリア旅行に役に立つかもしれませんね?茨城県牛久市では今でもカッパの伝説がいくつも残っています。これを観光資源として観光協会はPRキャラクターにしてキューちゃんと名付けています。牛久ではカッパにあやかって、かっぱ米、かっぱすいか、かっぱ大根なども栽培されているそうです。キュウリは何処へ?
さて、うぐいす四葉キュウリですが、元々の四葉キュウリは中国の伝統野菜で、四川料理には欠かせない食材の一つ。紀元前100年頃には食べられていたそうです。日本への伝来は大正時代、韓国から日本人が持ち帰ったそうです。本来は濃い緑色の果実ですが、この美しい翡翠色のうぐいす四葉キュウリは日本で生まれたもの。株式会社ときわ研究場が育種し、2018年に登録されたそうです。皮は柔らかく、肉質はパリッと歯切れが良く、香りも上品で、美しさと美味しさを併せ持つ爽やかな野菜です。